携帯電話による利用も含め、インターネットの利用率は日本においてほぼ飽和状態にある。しかし、2006年以降本格的に発展したYouTubeなどの動画投稿サイトの隆盛など、そのサービスやコンテンツの種類は益々多様化を遂げ、膨脹の一途にあり、それに伴い人々のネット利用の様相も変化を続けている。今回の調査研究の目的は、現時点(2008年12月)における人々のインターネット利用の実態および近年の変化を明らかにすることにある。
我々の研究グループは2000年から2005年にかけ情報通信研究機構(旧・通信総合研究所)と共同でインターネット利用に関する実態調査を実施した。その成果は毎年、情報通信研究機構編『インターネットの利用動向に関する実態調査報告書』として報告されたほか、データの一部は総務省編『情報通信白書』にも引用され続けた。同時に、我々の研究成果は、ワールド・インターネット・プロジェクトの一翼を担うものであり、世界の28カ国の研究者と緊密にデータの交換・比較を行ってきた。このワールド・インターネット・プロジェクト(World Internet Project :WIP、http://live.online.se/wip/参照))は、1999年、アメリカUCLA情報通信政策研究センター所長Jeffrey Cole教授の主導により創始された国際共同研究企画であり、現在、アメリカ、イギリス、日本、カナダ、シンガポール、イスラエル、中国、オーストラリア、スウェーデンなど28カ国が参加している。その趣旨は、インターネットがどのような社会・文化的影響を人々にもたらすか、実証的調査を通じて国際比較を行うことにある。日本チーム(代表:三上俊治)は設立当初よりこのプロジェクトに参加し、2000年から2005年にかけて実施した全国調査の結果を基に、データの国際比較を行ってきた(成果の一つが東京大学社会情報研究所・通信総合研究所編『世界インターネット利用白書』NTT出版)。
一方、東京大学大学院情報学環では、平成16年度より5カ年の予定で、文部科学省「21世紀COEプログラム」の一つとして「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」プロジェクト(拠点リーダー:坂村健)を実施してきた。今回、2008年12月に、そのCOEプログラムの一環としてWIPとしてもデータを比較共有できる調査を実施した。本稿はその成果の報告である。2004年2月
2009年3月
東京大学情報学環 橋元良明
本調査(「情報行動に関する意識調査」)は、アメリカのUCLAを中心に世界28カ国と共同で取り組んでいるワールド・インターネット・プロジェクト(WIP:World Internet Project)の一環として行われたものであり、2008年12月時点での東京23区住民のインターネット利用実態を明らかにするとともに、他国の利用状況との比較研究を可能にすることを目的としている。
2006年のWIP国際会議において合意された国際共通設問をもとに、以下の項目についてたずねている(詳細は末尾添付の調査票参照)
(1)メディア視聴時間
(2)インターネット利用の有無と利用時間
(3)対人コミュニケーションとインターネット利用
(4)目的別のインターネット利用状況
(5)動画投稿サイトの利用状況
(6)PCサイトの利用状況
(7)携帯サイトの利用状況
(8)インターネット上のコミュニケーション状況
(9)コミュニティサイトの利用状況
(10)メディアの重要性・信頼性評価
(11)各種情報についてのメディア利用
(12)インターネットと政治・社会意識
(13)情報選択能力
- 東京23区の満16歳以上の男女標本数 2,200人
- 標本数 560
- 抽出方法 エリア抽出法
2008年10月31日〜12月7日
調査員による訪問留め置き式回収法。